去る9月5日朝、ずっと一緒に過ごしていたチビが虫歯との闘病及び老衰のため永眠しました。 今まで本人目線でブログを綴ってきていたが、その本人が他界してしまった。。。 ここからは主人の私が彼の人生について書き綴りたいと思う。

2007年のチビブログを読む


 そもそもチビとの出会いは2006年の秋ぐらいだったろうか。。。 最近自宅下の駐車場にかわいい顔をした人懐っこい猫がうろうろしているなぁと思っていた。ある日の仕事帰り、 足に擦り寄るその姿があまりにも愛らしかったので、玄関まで誘導してエサをあげた。たしか夕食用の笹カマだったと思う。 彼は嬉しそうに(よほどお腹が減っていたのか)無心で頬張って、おねだりした。
 どこかの飼い猫なんだろうな、この人懐っこさは。。。見れば見るほど端整な顔つき。しっぽも長くて立派な美猫。 特徴的なのは背中に入った白い模様が天使の羽根のように見えることと、尻尾の先端だけ白いことだ。 そもそもうちのアパートはペット禁止。人目に付かないようにコソコソとエサをあげる日々が数日続いた。

 自分は高校生の時に実家下で生まれた子猫を育てたことがあった。名前はチョロ、三毛のメス猫だ。 チョロはその後家猫となり、1度は子供を生んで育てたこともあった。大きな病気をすることもなく、最後は父と二人暮し。 丁度10年前に他界したが、外には自由に出入りできる環境だったこともあり、最後を看取られることなく、 晩年そっと姿を消し二度と家には戻らなかった。

 チビの存在は我が家にとっては心癒される大きな存在であった。毎日エサをもらいにやってくる彼が本当に可愛く、 禁止を承知で「うちで飼ってやろう」と決意した。彼は本当に賢い猫で、もこちらの事情を知っていたのか、トイレはもちろん外。 玄関先で1鳴きして、ドアをあけるとささっと飛び出し、数分すると人目を気にするように階段を駆け上り帰ってくる。
 彼が来て初めての正月、父を招いて年末恒例のカニ鍋を準備していると、今まで見たことのないはしゃぎぶり。 何とチビの大好物は「カニ」であった。みんなの席に走り寄り、カニをねだる。腹いっぱいになると自分のベッドでご満悦の睡眠。 本当に幸せそうな表情だ。

 そんな彼がある日外で変な声を出して鳴いていた。のぞいてみると人影。。。誰かがエサをあげているらしい。。。 近隣の目もあるので、そっと声をかけてみると、そこには「元の飼い主」のお向かいのおばあちゃんが泣きながら座っていた。 話を聞くと、チビは20年ほど前に拾ってきた野良猫で、別の猫をもう1匹飼ったら、家出して帰ってこなくなったと。 たしかにチビはおばあちゃんに寄り付きもしない。うちで預かって可愛がっている事情を話したら、 おばあちゃんも安心してくれた。きっとチビの心境は複雑だったに違いない。しかし、この猫が20年ってことは、90歳以上?。 何かおばあちゃんが勘違いしているのだろうと思った。どう見てもこの猫、12〜13才ぐらいなのでは?と思っていた。

 すっかりうちの猫となり、全く警戒心のなくなったチビの日課は人のおなかの上で寝ることだ。夕食を共にし、 必ず何か自分のエサ以外の食べ物をもらって満足すると、そそくさと人のお腹の上に乗っかり一眠り。
外出で留守番をさせることも多々あった。鍵の音に気づくと玄関まで飛んで来てお出迎えとともに、 何を言っているかわからないが、一生懸命文句を言いながら擦り寄ってくる。「遅かったじゃないかー、お腹すいたよ〜」 という風に聞こえてしまうぐらい微笑ましかった。よっぽど賢いのか、一人で留守番させても、全くいたずらもしないし、 トイレもちゃんとしていた。



 すっかり我が家の家族、しかも生活の中心となったチビ。彼の存在がどんなに心の癒しになったか計り知れない。 そんなチビの様子ががある日突然おかしくなったのは家に住み着いて約2年。風邪をひいたのかぐったりして、 鼻とよだれが止まらない。慌てて獣医さんを探して往診してもらった。 初めてお願いする獣医さんであったが、本当に良い女医さんで、休日にもかかわらず家まで注射を持って往診に来てくれた。 チビは先生が医者だとわかっているのかかなりの抵抗を見せたが、押さえつけられてからは諦めたのか大人しく点滴を受けていた。 先生によると、上の犬歯2本の根っこが化膿していて、その膿が鼻を通じて出ているらしい。 治療方法は「歯を抜くこと」だが、年齢と体力を考えると施術に踏み切ることは躊躇した。 この時点でも先生はチビのことを13〜14才ぐらいと思っていた。
抗生剤を注射すると少し良くなるが、2週間もすると薬が切れ、また同じ症状を繰り返す。食欲も落ちだんだんと痩せていく。 本人は一生懸命食べようとするのだが、人間でも歯が痛いときに食べるのは苦痛だ。体力も落ち、 家から外に出ることは無くなっていた。

 9月5日の朝、息が荒くなったチビは自分のベッドから動くことなく、じっとしていた。 調子が悪くなってからというもの、ずっとそばで看病していた妻に手を握られ、そっとその生涯を終えた。 悲しみの中、前の飼い主のおばあちゃんにお知らせして、葬儀を取り計らった。 2つの家族に愛されたチビの霊前で、チビの思い出話を泣きながら聞いていた。おばあちゃんの家で20年、 そして我が家で2年、チビに嫌われたと思っているおばあちゃんの悲しみを見ると、複雑な気持ちになった。 本当はお骨を引き取ろうと思っていたが、生家にお返しするのが良いと決意した。

 あれから数ヶ月、ようやくチビのいない生活にも慣れつつあるが、思い出さない日は無い。 撮り貯めた写真をプリントし、アルバムにして、何かにつけてそれを眺める日々が続いている。。。



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